清王朝末期ごろのままのスタイルを採る八卦掌(以下「清朝末式八卦掌」と呼ぶ)は護身術である。厳密に言うと、一定時間護身して生存し続けることで、守るべき人(高貴な身分の人)を守る護衛術である。 自らが囮(おとり)となり、守るべき人を守る、満州民族至上主義の厳格な身分制社会の中で身分の低い人間(宦官・かんがん)が使っていた護衛術である。※その点については、いずれ詳しく話す。 少しブログで触れた事がある。 『清朝末式八卦掌は、残酷歴史から生まれた中国産護身術の一つ』|http://nenkinkouza.com/weblog/?p=548 護身術に格闘ロマンを求める人間が、ときおりいる。そのタイプの人間は、護身術たる清末の八卦掌を見ると、高い確率で、次のようなことを指摘してくる。 ・・・逃げてばっかりで、自分の攻撃が当たらない。それじゃあ、倒せないぞ ・・・移動打ちなんかだと、強大な発勁(はっけい)で打つことができない。 ・・・打つ時、へんてこな態勢で打っているので、格好悪い。 ・・・間合い取りばかりで、防御技すらできないじゃないか。 護身術にロマンはいらない。ロマンを求めると、「真っ向から打ち合って勝利する」や「日一歩も引かずに打ち合う」などの、格闘技ロマンが入り込んでくる これらの一般的な「格闘ロマン」と、清末八卦掌の決定的な違いは何か? それは「相手次第で勝敗が決する」か「自分次第で生存できる」である。 筋力を鍛え、対人練習で打ち合う練習を毎日のように行い、かつ攻撃を喰らってもよい身体を作り上げるなら、ロマンを採り入れてもよいだろう 相手の技能を上回る努力をし、相手の攻撃にも倒れない肉体を作り上げる。お分かりの通り、これらの基準は「相手」なのである。 清末八卦掌は、護身術なので、とにかく生存しなければならない。相手がどのような人間だろうと、どのような状況だろうと、生還しなければならないのである。 相手の状況によって、生きる死ぬが決していたら、それは護身術ではない。そんな不確かな技術に命を賭け、長い時間を練習などできない。 生き残るために練習するのだ。「その時」になってみないと、相手の状況・強さなどはわからない。 相手の状況が分からなくても、「生存」の結果だけは確保するため、清末八卦掌は、あれほど徹底的に、敵と間合いを取り、敵の力にぶつからず、武器を何でも使いこなすことができる身法が基本になっているのだ。 勝つことなど念頭に置いてない。勝つならば、敵を攻撃し、倒さなければならない。八卦掌創始者は、弱者が身体的に劣る中で攻撃すると、その時、もっとも攻撃を喰らってしまうことを早くから悟ったのだ。 護身術を使う場は、命を賭けた情け容赦無用の卑劣な場である。強者が自分自身の欲望を満たすために、慈悲もなく襲ってくるのである。格闘技試合ではない。格闘技試合で負けても、審判が止めてくれる。 倒されても、その後(ご)が行わえれることはない。その後の人命に対する危害や、蹂躙(じゅうりん)が行われない。だから安心して、「とにかく身を守る」以外のロマンを求める。 もう一度、この点、触れておく。 護身の場で負けると、自分の命を奪われる。 護身の場で負けると、自分や大切な人の財が奪われる。 護身の場で負けると・・・大切な人が、暴力のもと、蹂躙される。 だから、決して負けることができないのだ。勝つ必要はない。しかし決して、負けてはいけない。 自分がどうなろうと、最低でも、守ると約束した人だけは守らないといけない。どんなことがあっても。自分がその場で倒れても。 その前提があって、清朝末式八卦掌という、弱者護身・生存の特異な拳法が誕生したのだ。 護るべき人を守るなら、止まってはならない。毎日、後ろ敵に対し勢(せい)を落とさず転身攻撃することを練習し続けなければならない。そこには、その練習には、ロマン技法は一切ない。 暴力が当たり前だった太平天国の乱勃発当時の中国では、庶民が護身のために武術を練習する際は、とにかく我が身をまもるために、成立当時八卦掌を始めとするシンプルで分かりやすい武術を練習した。 「門出二十年」や「一子相伝」などの要素は、昔日当時、当然広まらなかった。そんなこと、している暇がないのだ。今すぐ、賊徒や太平天国軍、果ては清朝正規軍までもが、命を奪いに来るのだ。 現在は、皆が戦うこともなくなったため、護身術教室に来る女性でも、一定の「見栄え」 を重視している。 私は何度も戦った。その都度、100点対応だったわけじゃない。何度も繰り返し、修正し、昔日当時の術理で縦横無尽に移動できるように配慮して積み重ねてきた 大きな力で相手を倒すのではない。ロマン要素採るか、徹底して護身を貫くか、である。 護身術を選ぶなら、八卦掌水式門でなくてもいい。しかしここで読んだことは、頭に入れておいて欲しい。 迷ったら、ロマンより実用を選べ。迷ったら、勝利より生存を選べ。 『清朝末式八卦掌は、残酷歴史から生まれた中国産護身術の一つ』|http://nenkinkouza.com/weblog/?p=548 八卦掌水式門 北陸富山本科|http://nenkinkouza.com/baguazhang-class-toyama/index.html 遠隔地生部 護身術通信講座科|http://nenkinkouza.com/tuushinkouza/tuushin-defense.html
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