護衛官刀術たる「転掌刀」を理解するためには、戦場刀術から八卦掌原型武術・転掌への橋渡しとなった最初の刀術「単換刀」を学習する必要がある。 単換刀で、3つの生存秘訣を学ぶ。その3つとは、転掌移動法たるショウ泥歩法・単換刀を構成する2つの術理「翻身旋理(ほんしんせんり)」・「刀裏背走理(とうりはいそうり)」である。 「翻身旋理」「刀裏背走理」のふたつは、転掌の基本素手型・単換掌(たんかんしょう)のエッセンスを構成するため、「単換掌両理(たんかんしょうりょうり)」とも呼ぶ。 単換刀は、基本術理を理解するためだけの型ではない。その型は、実際の敵対処法の典型的な動きを採りあげ、その動きの中で、護衛官刀術に必要な術理を体験・学習させる。よって、護衛官刀術を習得したい人間は、単換刀に時間を割くべきである。(当投稿添付画像参照) 単換刀の動き|https://youtu.be/yii9IGQDA24 弊館講習会・練習会でも、刀術講習会では必ず、単換刀の指導を行っている。興味のある方は、参加してほしい。 独学システム対応。護衛官刀術「転掌刀」講習会|https://nenkinkouza.com/workshop/tenshou-oneday-koushuukai.html 「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html ◆「転掌」源泉型の単換刀は、明朝~太平天国の乱頃の戦場藤牌兵の武術から生まれた 単換刀は、太平天国の乱当時の藤牌兵(とうはいへい※片手に盾を持った歩兵)の戦場刀術を主な材料として作られた。切れ味の悪い重たい刀を、敵が後方から追い上げてくる極限状態の中で、身体移動によって上げ下げし操作して刀身を敵の刀身もしくは敵身体にぶつけ、けん制し身を守る。 「斬る」は二の次の、身分の低い歩兵用の戦場武術である。なぜなら、貴族でもない下層兵士もしくは庶民が持つ刀に、研ぎ澄まされた刀を準備し装備させることは現実的ではなかったからである(コストがかかりすぎる)。 身体移動によって防御し、身体移動の推進力を利用して攻撃をする転掌の術理が、単換刀に明確に見られる。単換刀では、身体移動による数歩の移動力で重たい刀を持ち上げ敵の攻撃軌道をふさぎ、敵の斬撃を弾き、数歩の移動によって、振り下ろし、振り回し、敵に刀をぶつけ、攻撃する。 重たい刀を、斜め後方スライドに伴う身体移動によって引き上げ、下ろす。振り出した刀をわざわざ身体に引き戻したりしない。時に刀の先端が地面に引きずられた状態から持ち上げ、時に自分が刀の下をくぐって斬るための角度を作り、移動しながら斬撃をする。 なぜこのような刀の用い方をするのか。もうお判りであろう。それは、身体的資源不利者たる宦官・宮女でも、用いることができる刀操術である必要があったからである。移動によってじっくりと刀を上げる必要があるために、敵の眼前にとどまっているわけにはいかないのである。 刀や棒は、弱者が護衛を果たすうえで欠かすことはできない。その前提条件を満たすために、移動によって刀や棒を操る技術が編み出された。その代表的・土台的な技術が、単換刀なのである。 ◆単換刀術(を含めた転掌の全技法)の土台は、移動歩法にあり 各道場では「実戦的」とよく宣伝している。しかし実戦的、とはどういうことだろうか。 それは、状況に左右されない、相手に左右されないで、己の武術の真価を発揮し、敵に対応できる状態を言う。破壊力が高いとか、練習組手の内容が顔面有り、とか、そういうことではない。 転掌は極めて実戦的である。言い換えるなら、実用的、と言っていい。 その実用性を根底から支えるのが、移動歩法である。ショウ泥歩という、全路面状況対応型の歩き方を元に、どのような天候下でも、日頃練習した動きができるよう、事前に練習する。 移動が主体の拳法なのに、路面状況がちょっとでも悪かったら、動けないのでは、使えない。それをシビアにかんがえたのが、転掌歩法におけるショウ泥歩である。 現代八卦掌は演武化し、移動歩法にシビアさを求めない。練習は屋内、悪条件下での練習をしないから、演武的な歩き方が実戦においてどのような弊害をもたらすか、分からないのである。 ここは身を守る護衛刀術をレクチャーする場である。この投稿を読んだ方は、ぜひとも転掌の移動歩法を知って欲しい。 転掌移動歩法について|https://nenkinkouza.com/defense/woman-defense.html#section3 ◆単換刀術の技の成否を分ける「翻身旋理」と「刀裏背走理」 単換刀でも、素早い転身移動を可能にするため、股関節をたたんで転身半径を最小とする「翻身旋理」を当然に用いる。いや、ここで「翻身旋理」が生まれたのである。(当投稿添付画像参照) 翻身旋理による転身動作に、刀を持つ手を絡めて引き上げる。「絡めて引き上げる」とは、引き上げた「刀を持っている手」の下をくぐることで、身体移動に引っ張られるようにして刀先が回る。引っ張られる際、刀の刃の付いてない部分(刀裏・刀背)が自分の背を向いた状態で引っ張られる「刀裏背走」の状態となる。 刀を持つ手は、身体軸から極力離さないで行う。そうすることで、身体移動で刀や長棒を操る感覚を味わいながら、実際に自在に扱うことができるようになる。身体に「へばりついた」状態を感じながら行うことができるなら、それは技術レベルが高くなったサインである。 刀の柄の部分にとどまることで、刀を振り回して自分も振り回されることに伴う体力ロスを防ぐことができる。そして、常に自分の身体を柄の部分にとどまらせることで、自身と敵との間に刀の刃部分の距離を保つことができ、護身を可能とする。 重たい刀(棒)を手首の返しだけで操作するのが難しいこと、実戦の緊張感の中で刀を持ち替えることが危険であることなど、単換刀は橋渡し的な型でありながら、極限状態の実戦の現実を考慮した実用的な型であると言うことができる。 そしてその型は、先ほども触れたように、絵にかいた餅的な使い方を提示しない。講習会では、その使い方を指導する。 独学システム対応。護衛官刀術「転掌刀」講習会|https://nenkinkouza.com/workshop/tenshou-oneday-koushuukai.html 「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html
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