実戦の話に入る。より具体的な話だ。この内容を読み、頭でイメージをしながら単換刀を練習してほしい。ここで紹介する技術は、誰にでも可能な技術なのだから。 戦いにおいて最も難しい局面とは。転掌ではその局面を「緒戦」とする。 緒戦とは「戦い始め」のことである。多くの人は、戦い始めと聞くと、向き合って構える両者を思い出すのではないか? それはすでに洗脳されているのである。技術の未熟な者にとって、あの緒戦の過ごし方は最悪である。身動きのしにくい逃げにくい状態に自らを追い込み、未熟な刀剣術で対抗する事態に、自らを追い込むのである。 剣道の試合を見たことがあるだろうか。一瞬である。あの一瞬の動きを、あなたは剣でさばくことができるだろうか。私はさばく自信が無い。私はあの動きをさばく技術を習ったことがある。指導許可も得た。しかしさばく自信がない。あの技術に命を預ける自信がないから、そのようなものを人に「護身に!」などと言って教えないのである。 以下で「緒戦→移動→斬撃」の順に話す。単換刀術の型練習に命を吹き込もう。 転掌独学システム|https://nenkinkouza.com/video/ 独学システム対応。6/21護衛官刀術「展掌刀」講習会|https://nenkinkouza.com/workshop/tenshou-oneday-koushuukai.html 「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html ◆緒戦 ではどのようにするか。 シンプルに考えよう。常に敵に対し、肩越しに対応するのである。そして緩い横目の状態で、自分の斜め後ろに敵をとらえておく。 当然敵も動く。その動きに沿って、敵を肩越しに斜め後ろに置いておく、のである。 これは難しくない。友達に相手をしてもらっても練習できる。練習相手が居ない場合は、自分の頭の中にリアルなイメージを持って練習することもできる。 そして、敵が少しでも近づいて来たら、すぐさま一目散に反対側へ移動するのである。 この際、敵を見ながら反対側移動してはいけない。移動する方向へ、頭を真っすぐに向けて移動するのである。 「敵から目をそらしたら、後ろから斬られるだろう」とお思いだろうか。 移動は歩きながら移動するのではない。前回の講座で話した、ショウ泥歩で、小刻みに速く移動する。速く移動することで、相手の斬撃は届かないのである。 おわかりだろうか。一太刀(いちたち)を外すのである。一太刀目が、最も危険なのである。一太刀目に全神経を注ぐ剣術・拳法は多い。その一太刀目を、相手の鍛えぬいた土俵(技に対し技で対抗する土俵)でではなく、自分の土俵で外すのだ(移動によって物理的距離をとり、それによって技無しでかわす土俵)。 ◆移動 相手の移動に際し、素早く移動することで、ほとんどの場合、一定の間隔が空く。しかしその間隔は、安全なものではない。もしその戦いが、要人・大切な人を守るものならば、あなたはそれ以上距離をとることはできない。 よって護身であれ護衛であれ、あなたは何らかの対敵行動をとる必要がある。 敵は一太刀目を外された状態では、まだ元気である。追ってくるのが常だ。護衛の場合、敵は護衛者たるあなたをまず倒そうとするだろう。 護衛の場合、まっすぐ移動し続けることはできない。自分が要人から離れてしまうからだ。そうなると、敵は要人に矛先を変えてしまう危険が生じる。よってここでの移動は、旋回移動となる。円状に、移動行動をとる。 敵を必要以上に離すことができない護衛の場合、我が身の安全は、移動による距離の創出によって行われない。旋回移動によって敵を視界の端にとらえ、去り斬りをしながらけん制し続けて安全を図る。そのけん制攻撃が、敵を我に引き付け、要人の護衛となるのである。 単換刀の型の目的は (1)移動し間隔を創出し (2)移動の中で敵が間隔を詰め接近してきたら、刀を敵に出して、引き続き上げて、その下をくぐり (3)その後、くぐった先の場所から去り斬りをして (4)自分の身を守りつつ敵を我に向かわせて引き付けて 要人を護衛する、というものである。 ◆斬撃 移動の中で、刀をくぐった先まで述べた。 ここでは、くぐった先のことをもっと詳しく話そうと思う。 ここで行う斬撃は、「けん制」要素が強いといえども当たる可能性もある「攻撃」であることに変わりない。そこで多くの近代格闘技経験者が、ここで敵に向かいながら斬る道へ走ってしまう。 違う。 どの局面を経ても(例え緒戦で間隔を作った後の対応といえども)、敵に向かうことはリスクを伴うのだ。「敵に向かう=敵の攻撃射程圏内に、我が身を投じる」ことを意味する。 近代格闘技の経験者は、「倒す」「攻撃を当ててダメージを与える」の思考に洗脳されているのである。護衛者たる者があっという間に倒されてしまっては、その後守るべき人が不在となり要人に危害が及ぶ。 そのようなことになったら、護衛任務は失敗である。護衛任務を果たすには、一定時間、味方(後宮の他の官吏ら)が異変に気づいて騒ぎ詰め寄り敵が逃走するまで生存し囮(おとり)で在り続けなければならない。 我が身を守りながら、けん制する方法。それこそが「去り斬り」である。もっと具体的に言うならば、斬りながら身体を逃がすことである。上級者は、斬った瞬間に、身体も、そして目線ですらも反対側へ移す。そこから間髪を入れず旋回行動に入り、敵が態勢を立て直す直前に再びけん制攻撃をする。 弊館では、この上級段階は、掌継人課程に進んだ代継門弟(拝師弟子)に、師(私)が自ら教える。ここは護衛官刀術に初めて触れる方のページであるが、最終段階を知っておくのはよい。やる気も出る。初期段階は地味だが、その先の世界があることを知ると、意欲も湧く。 まとめよう。斬撃において大事なことは、敵に向かいながら斬らないこと、に徹することだ。斬りながら身体を逃がし、次のけん制斬撃につなげる。 離れながら斬れば、自分の攻撃は届かないかもしれない。しかし「届かない=敵の攻撃も自分に届かない」のである。 転掌刀による護衛官刀術は、一撃必殺でも、必倒でもない。一定時間生きのこり、敵を引き付けることである。当たらなかったことを最善とせよ。それ以上を求めると、必ずいつか、その者は不覚をとる。 防御主体(第三者には、やむなく逃げながら対応しているように見える)のその対敵法は、後日、警備の適切さを法的に問われた際、警備員とその会社を守ることになるだろう。 転掌独学システム|https://nenkinkouza.com/video/ 独学システム対応。6/21護衛官刀術「展掌刀」講習会|https://nenkinkouza.com/workshop/tenshou-oneday-koushuukai.html 「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html
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