移動し続けること。移動しながら敵を斬る(打つ)こと。これは、生存を図りながら敵に対処する転掌刀術の基本である。移動を止めないことで、我が身を守る。今日は、「移動」による「去り斬り」の重要性を説明したい。 ◇「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」の詳細|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html 護衛官刀術講座の第2回目である。 転掌八卦門の八卦掌は、移動から生じる「勢(せい)」こそが、命を分ける要素となる。 勢を維持し続ける技術を得ることが、初歩の修行内容となる。 古来より、威力の小さい者、その重さの軽い者は、手元の技術を発達させるか、移動し続けることで、その身を守り続けてきた。 駆逐艦しかり、計量騎兵しかり、そして転掌の技術の大きな源の一つとなった、明朝と清朝藤牌兵しかり、である。軽量であるがゆえの機動力を活かして、移動し続けたのである。 技術に走る道もある。しかしその道は、技術獲得に多大な時間と労力を要するのである。ロマンはある。弱き者が強き者に、華麗な技術で対抗し翻弄し、打ち勝つ。それは人を心をとらえるが、時間がかかる。その険しい道を乗り越えることができるのは、ほんのわずかな者だけである。 昔日の武術は、一般庶民が、自身の身の周りの生活の中にある危機に今すぐ対応するため、「武術経験もない、恵まれた身体的素養もない人間が短期で身を守ることができる」技術体系を持っていることが、門が栄えるための派必須条件であった。 複雑で技巧的、その習得に多大な労力と時間を要する技術体系の武術は、武術をたしなむ名門武家に代々伝えられているような「家伝武術」のみだったのである。 転掌は、純然たる「庶民武術」である。いわんや創始者が、清朝後宮内の御用武術に採用されることをもくろんで、その技祷体系を徹底的に、庶民化・弱者使用前提化させた。 当然そこに伝えられてきた刀術も、移動主体の、簡素な技術体系の刀術となる。それゆえ、力も武術経験も少ない宦官(かんがん)・宮女(きゅうじょ)が、転掌刀術を普通に習得でき、かつ実戦使用することができたのである。 シンプルな技術体系は、武官を後宮内に入れたがらない王族の思惑に合致し、転掌が認められてその名を上げた。皮肉にも、有名になったことが、その稀有な技術体系を変えることになってしまったが。 話を戻そう。 では実際、移動しづける中で、どのように刀を使用すればいいのであろうか。それを教えてくれるのが、「転掌刀術」というシンプルな単式型集である。 まず「単換刀」で、転掌徒手技法の術理で刀を扱う経験をする。後ろに下がりながら斬り去るための身体操作法を学ぶ。その大原則的・基本功的な基礎単式型を学習した後、転掌刀術を学んで、実際の縦横無尽な移動に、刀を追随させて去り斬りけん制攻撃などの、移動攻防する技術を、身体にインストールしていくのである。 すぐに使える必要がある。どのような道具でも使える必要がある。そのため、刀術とはいいながら、そこら辺にある「棒」を使用することを前提としている。ゆえに、「斬る」よりも敵の急所を「叩く・打ち抜く」ことがメインとなる。 宦官・宮女は、刀・剣などの、攻撃力のある武器の携帯を許されなかった。当然である。それらの立派な武器を携帯しなくても王族の護衛ができる護衛武術であることも、清朝後宮の御用武術に採用されるためのPRポイントだったからだ。 その特徴は、結果的に、武器の携帯が認められない現代日本の現状にマッチする。私たちは、護身グッズですら、携帯に一定の制限がかけられている。身の周りの単なる棒・例えば傘などで、戦わなければならない。その時、転掌刀術の技術体系は、本当に役に立つのである。 ◇転掌刀術の弊館サイト内説明ページ|https://nenkinkouza.com/weapon/change-sword.html 去り斬りをすることの最大の理由は「自分が斬られない」ためである。刀で、棒で、防御すればいいではないか、そのための持っているんだろう、そのための技術だろう?とお思いだろうか。 前回も触れたが、試しに、スポンジ棒やスポーツチャンバラ棒で、斬り合ってみるとよい。すぐに斬られる。いずれ斬られる。どこかが当たる。その棒が真剣だったらどうだろう?理性を失って振り回してくる相手に、とどまって手先の技で受け続けることができるだろうか。 刃物の恐怖は言い表しようがない。それを喰らったら、人生が終るのである。その恐怖は計り知れない。私は経験から言っているのだ。戦い終わった後も、その後しばらく、恐怖で珈琲缶すら持つことができないほど、身体が震える恐怖である。多くの人間は、狂気に囚われ襲い掛かってくる人間に、繊細な技で対抗できない。膨大なくり返しを経た剣士ですら、恐怖するのである。 一般庶民が刃物に対抗するには、今その場から下がりながら、払い続けること、のみである。「去り斬り」の転掌刀術は、その技術のひとつの集体系である。 警備員に指導する際も、その点を心掛けている。警備員は剣士でない。保安のプロであるが、身を守る技術は持っていない。警備員講習コースでは、その点を心掛けている。 ◇「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」の詳細|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html 時間的制約・会社の都合などから、採用する警備員一人一人に、高い護衛技術を指導する時間はない。そこで転掌刀術が役立つ。転掌創始者は、武術の経験のない宦官・宮女に、短期間で護衛任務に就かせるための技術を身に付けさせた。 そのうちの一人に、私の先師が居るのである。その時創始者・董海川先師が伝えた技術は、楊家転掌式八卦掌の門祖によって改編を禁止された状態で、私に伝わった。 門祖に感謝している。警備員・保安職員、そして護身術に興味のある、もしくは護身術を必要とする現代の有志に、そのままの体系で伝えることができるからである。 「警備職護衛術指導|過剰防衛を避け施設を守る護衛官刀術講習」の詳細|https://nenkinkouza.com/kobetushidou/course-keibiin.html 開催予定の講習会|https://nenkinkouza.com/workshop/ 転掌八卦門護身術独学システム|https://nenkinkouza.com/video/
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