「ショージとタカオ」半世紀を経て自由をつかみ取った「あきらめの悪い二人組」 （投稿ID : 12jcr7）

この平和ボケの時代の悩みなど、この本を読んで吹き飛ばそう！(^O^)／

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映画監督の・井出洋子さんが、2023年8月13日に亡くなりました。合掌。

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【ショージとタカオ】 https://ameblo.jp/momiccotaro/entry-12805058352.html

「俺の上には空がある　広い空が」桜井昌司著　 https://ameblo.jp/momiccotaro/entry-12806457901.html


「ショージとタカオ」半世紀を経て自由をつかみ取った「あきらめの悪い二人組」
「ショージとタカオ」井手 洋子著（制作）



　素人の私が言っては何だが、著者（制作・監督）とデザイナーはウマイのだ。

　ショージ20歳、タカオは21歳で逮捕され、最高裁で無期懲役が確定、収容（収監）。
そこから無罪確定まで実に44年間もの長期に渡る冤罪事件のドキュメンタリーである。（布川事件・出所後15年間の長期に渡る実録）

ネガティブ極まりないネタであるし、恐らく多くの日本人はこう言ったことを表立って話題にしない。

そこで「ウマイ」とは、この本と映画のタイトルとジャケット装幀のことだ。もとより世界を意識した作品だったのかも知れないが、ほとんどハリウッド映画の様相だ。


（めげない、あきらめない、立ち止まらない）
冤罪事件の映画にピンクと紫。咥えタバコとは粋だ



これが、『苦節44年・昭和の大冤罪布川事件・桜井昌司氏・杉山卓男氏の悲しみと怒りの記録』では、ますます多くの日本人が目を背けてしまいそうな気もする。




ちなみに「ショージとタカオ」映画版が受賞した賞は以下である。

第84回「キネマ旬報」文化映画部門ベスト・テン第１位
2011年文化庁映画賞 文化記録映画大賞受賞
第66回毎日映画コンクールドキュメンタリー映画賞
2011年釜山国際映画祭アジア部門最優秀ドキュメンタリー映画賞
第20回日本映画批評家大賞ドキュメンタリー作品賞
第8回ドバイ国際映画祭ベストヒューマンライツ映画賞

（今だに真犯人は見つかっていないので念のために記しておくが、私の生まれた年は布川事件の4年後であるから私は無罪である）

44年後の無罪確定と言っても、彼らの場合には、上告を繰り返し最高裁で無期懲役が確定するまで留置所や拘置所などで過ごした未決期間だけでも11年間。その後の刑務所生活が18年間（獄中合計29年間）無罪が確定しないまま刑期を終えての仮釈放から、世間の疑念に耐え続けること15年間。

並の人間なら、この長期間に渡る怒りや苦しみ悲しみ不安感などに心身を侵されて病死しているかも知れない。

（その後2022年、逮捕から55年弱の時を経て国家賠償訴訟にも勝訴したが、ショージは不治の病で医師から余命半年との診断。普通なら「俺の人生何なんや！いま何億もろてもしゃあないんや！」となりそうな所だが、ショージは精力的に国内を飛び回り活動中とのこと）


実際彼らは、この粋の良いタイトル文字のようにノリが良い（もちろんそうで無い部分もある）。

刑務所生活を振り返る時にも。ショージは苦虫を噛み潰すこともなく、「工場作業では僕の腕前が一番ですよ！」と嬉々として語る。

また、拘置所収容中には、朝から晩まで外界に対して無罪と支援を訴え手紙をしたため、刑務所に入ってからも、わずかな時間を割いては家族や支援者等と応答を重ねた結果、指が大きく変形しているほどだ。

その内の一人、人権団体、日本国民救援会の高橋勝子さんと獄中長年に渡ってやりとりした手紙だけで、8畳間を埋め尽くす何千通もの量になったそうだ。

日本国民救援会 : http://www.kyuenkai.org/index.php?FrontPage


ショージは獄中で詩人となった。
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空は
足もとから始まっている
そう思えたとき
いつも見上げていた
希望やしあわせが
自分の隣にあるのも気付いた
空は
空は足もとから広がる
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また、自分を必死に支援し奔走してくれ、再会を果たすことなく亡くなった母に対する詩もある。

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母ちゃん
あの日　また来るよと　（恐らく最後の面会の時の別れの言葉／小太郎）
残していった言葉は
昨日のことのように憶えているよ
僕が手錠をされてから
いろいろなことがあったろうに
悲しみの晴れる日を
待ったろうに
うつむいた背中に
苦しみを背負ったままで
うつむいた背中に
悲しみをこらえたままで
待ちわびて　待ちわびて
逝ってしまった
母ちゃん　つぶやけば
夕日の中を歩く姿が見える
母ちゃん　母ちゃん
母ちゃん！母ちゃん！
も一度　その手に触れたかったよ
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他にも読者には、思わず嗚咽しそうなほどの辛さと、谷がとてつもなく長く深いからこそ、大きな喜びを感じることになる。

彼らの半世紀に渡る長期間闘い続ける信念もすごいが、
1,000人にもなる支援者団体の人々の存在にも驚いた。
特に大富豪であるとか、人権団体であるとか、有名人ばかりではなく、一般のサラリーマンや主婦も含まれている。

誰も判決の真偽や真犯人は知らない。それなのに彼らを信じて、堂々と応援する。

出所後も自分たちの時間を割いては集まり歓迎会をしたり、職の斡旋。住居の提供。当面の日々の生活費のカンパなど家族でもない赤の他人がそうしてくれている。

この２人には、支援者を受け入れ、頼り甘えるだけの器があり、60年近くもの長期間に渡って関係性を維持できるのだと思う。

弁護団などの、金にもならない長期に渡る、警察や検察側の証拠の再調査の結果、多くの証拠品の意図的（であろう）な隠蔽や、何と中には重要な録音に13箇所ものつぎはぎ加工が見つかった。その後も100以上の証拠隠しなどの不正が見つかり再審請求。今度こそ最後の最後の、最後の「無罪」判決を待つばかりかと思いきや、特別抗告受付期限最終日の受付期限時刻を過ぎても、検察は高裁決定に従うとも、特別抗告をするとも表明をしない。
その後、期限時刻を超えて裁判所が特別受付をするとした19時をもまた2時間を過ぎてから、検察は何事もなかったかのように特別抗告をした。

証拠の改竄や隠蔽や、期限時刻の無視など検察らしい所業のオンパレードだった。

検察の無駄で無意味な足掻きによる余計な税金消費と時間の浪費が続いたが、2009年12月15日検察の特別抗告は棄却され、

43年前に有罪判決を出した水戸地方裁判所土浦支部に於いて、2人の裁判のやり直しが始まる。

15年間に渡って2人を追い続けてきた映像の山を、著者は一年半もの時間をかけて何度も何度も整理し直し、映画版「ショージとタカオ」が出来上がる。

2時間38分にもなる長尺作品だ。完成試写会を終え次々と各種受賞の朗報が届く中、一般公開が2011年3月19日と決まった。
そして、いよいよ本当の「無罪」判決も、その3日前の3月16日と決まっていた。

やっと、やっと本当の自由が目前に迫った判決の5日前、あの東日本大地震により、ショージとタカオの2人と、水戸地方裁判所土浦支部までもが被災してしまう。

判決は、映画の上映はどうなるのか・・・。

数ヶ月遅れて建物の補修を終えた水戸地方裁判所土浦支部で「無罪」判決がでた。そして翌月の6月7日、「あきらめの悪い」検察は控訴しないと発表した。

ちなみに映画版には、「めげない、あきらめない、立ち止まらない」と言う2人の生き様を表すキャッチコピーが書き込まれている。

やっとフツーのおじさんになれたタカオが最後に言った。

「これで普通の人間に戻れる。公民権もとれる。選挙権もとれる。外国にも行ける」

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空は
足もとから始まっている
そう思えたとき
いつも見上げていた
希望やしあわせが
自分の隣にあるのも気付いた
空は
空は足もとから広がる
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ショージ

（警察、検察、裁判所は謝罪をしなかった）