ジモティーを普段から愛用し、とうとう実家の売却まで行うに至ったという、作家でジモティーヘビーユーザーの高殿円さん。そんな高殿さんに、当時の体験や、ジモティーの活用術、ジモティーで取引を行う魅力を聞いてみました。
高殿円(たかどの・まどか)さん
兵庫生まれ。小説家。2000年に『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。新刊『私の実家が売れません!』(エクスナレッジ)が好評発売中。
処分に迷ったらとりあえず出品!ジモティーを使うようになったキッカケ
私は以前から家を買ったり建てたりすることが好きだったので、引っ越しをすることが多かったんです。そういうタイミングで子どもが使い倒した服とかが出てくると、「これ売りたくもないし、でも捨てられないし、どうしようかな……」と悩むことがありました。
あとは子どもの自転車とか、衣装ケースとか。そういうのってかさ張るし、発送するのも面倒だし、近所でやりとりするのが一番なんですよ。そんなときに、ジモティーを使うようになりました。
そう語る作家の高殿さんは、ジモティーが上場する前から長きにわたってサービスを活用しているとのこと。
ジモティーが便利だなと思うのは、要らないものを「すぐに」「罪悪感なく」手放せることです。誰かに譲ろうと思っても、梱包してやり取りして……みたいなことが面倒なんですよね。
かといって、ごみで出すのもちょっとはばかられる。そんなときにちょうどいい中間地点の選択肢として、ジモティーがあると思います。なんでもとりあえず出品してみれば、地元で欲しい人が現れてくれますからね。
どんな人が何を求めているかなんて自分では把握できないので、とにかくマーケットに載せるべし! です
高殿さんは、著書『私の実家が売れません!』で、ジモティーを使った「実家じまい」の体験をまとめています。
15年間にわたり放置され、モノがいっぱいの空き家状態になっていた実家。その片付けから家自体の売却まで、なんとすべてジモティーで行ったとのこと。なぜジモティーで? どうやって? 当時の体験を聞いてみました。
なんでも持っていって!思い切って決行したジモティーでの「実家じまい」
うちの実家は再建築不可物件※だったので、売ることはできないし、せめて賃貸に出すしかないと思っていました。
とはいえ、リフォームして賃貸に出すにせよ、残置物はこちらでどうにかしないといけない。業者に依頼しようかと思ったのですが、本当にモノが死ぬほどあったので、処分だけでも数十万かかる状況でした。
かといって自分で売ろうにも、いちいち全部梱包して郵送して……なんてやってられなかったんですよね。
※家が建っていても解体して更地にし、新たな家を建てられない土地


そんな高殿さんが目をつけたのが、普段から利用しているジモティー。
「ジモティーなら、とりあえず出品してみれば受け取り手がすぐ現れるという経験知があったので、活用しようと思いました」と高殿さん。当時、どのように大量のモノを処分したのでしょうか。
うちは昭和の古い家だったので、祖母の婚礼タンスとか、台所の入口にあった「なんであるの?」みたいな玉すだれとか、そういうモノが山ほどありました。そこで、とりあえず家具とか食器とか、こんな家ですということが伝わるような写真を何枚か載せて、「モノがいっぱいで大変だから、欲しいものがあれば全部無料であげます!」とだけ投稿しました。
ぶっちゃけ、バブルの時代の叔父の古着とか誰が持っていくんだろう、とか思っていたんですが、予想以上に反応が多くて驚きました。あまりにも多かったので、はじめは時間制にして受付をズラしていたのですが、最終的には1日中家の前でガレッジセールをやっている感じになりましたね(笑) 叔父の古着は古着屋のおじいちゃんが全部持っていってくれました。
空き家問題が解決されるかも?高殿さんがジモティーに見た可能性
その後、実家の引き取り手もジモティーで募集することになったという高殿さん。「賃貸に出すのも検討したんですが、やっぱりインフラの整備などが大変ですし、何よりとにかく早く手放したかったので」とのこと。
とはいえ、ジモティーに実家を出品するというのは、なかなか思い切った決断だったのではないでしょうか。
ボロ戸建てDIYのYouTuberとか、よく見てたんですよ。そういう人たちがもしかしたら見てくれるかもと思って、ダメ元でジモティーに載せてみたんです。「インフラもめちゃくちゃだし、再建築不可物件なのでつぶせません。それでも欲しい方いますか?」と。そしたらこれも問い合わせがとんでもない数で。
本にも詳しく書いていますが、某有名国立大学の建築学科の方とか、親のもとに帰りたい若夫婦の方とか、地元のちゃんとした建設業さんとか、本当にさまざまな方から連絡がきました。私としては全員に譲りたかったのですが、そんなときにクルーザー持ちの富豪が50万でカード即決してきて(笑)
その方と話をするなかで思いがけず気付かされた実家の価値や、その背景に感じた祖母の遺志などエモーショナルなエピソードも含め、著書では詳しく書かれています。
セカンドハウスに使いたいということだったんですよね。立地的に、ボートを出すのに便利だからと。でも、ボートを持ってる人の生活なんて考えつかないじゃないですか(笑) だから、やっぱりマーケットに出した者勝ちだなと思いました。
これからは地方の空き家問題がよりいっそう顕在化してくると思います。団塊ジュニアがどんどん「実家じまい」をするタイミングになると思いますし。バブル時代に建った、電車も通ってないような場所にある不動産って山ほどありますよね。ただ、そういう物件って、手放したくても載せられるマーケットがないんですよ。そんなときにジモティーを使えば、残置物から何から全部譲ることができてしまう。これ、めちゃくちゃラクだなと思いましたね。
あるいは、残置物の処理だけでも親の居るうちにジモティーで整理すると、後々すごくラクになると思います。地方に住んでいる親に、家の写真を何枚か送ってもらって、子どもがジモティーに出品する。そうしたらあとは「要らないものを家の前に並べといて! いついつこういう人が来るから!」で完結させることもできますよね。もはや、ジモティーは「実家じまい」カテゴリを作ったら良いんじゃないかと思うくらいです。
真価はモノの売買にあらず?高殿さんが語るジモティーの魅力
日常的な不要品の処分から実家じまいまで、これまでさまざまな活用方法をジモティーに見いだしてきた高殿さん。
そんな高殿さんですが、ジモティーの魅力は必ずしもモノの売り買いだけではないといいます。
もちろん、ジモティーは日常で必要に迫られて使うことが多いです。とはいえ、ジモティーを使っていて一番すきなのは、必要な人に渡ったときの「よいことをした感」なんですよね。
以前、子育て中のお母さんがバンで品物を受け取りに来たことがあって、そのときに「本当にありがとうございます」と何度もお礼を言っていただいたんです。丁寧な人だと菓子折りを持ってくることもあって。そんなときに、「ああ、私も子どもが小さいときにソファーをもらいに行ったなぁ……」なんてことを思い出すんです。そうして「よいこと」が連鎖している感じを確認できる。これはお金で買えない体験だなと思います。
今の時代、人と人とのつながりはどんどん希薄になっていますよね。でも人間って、本当はどこかでそういうつながりを欲していると思うんです。そんななか、ジモティーはモノのやりとりを通じて人と人をつないでくれている感じがします。なにもかもがアプリで済むような時代になったからこそ、基本に立ち帰れるというか。これって実際に体験しないとなかなか分からないので、ぜひジモティーを活用するなかで「人と人の原点」みたいなものの魅力も感じていただけたらと思います。
プロフィール写真の撮影:迫田真実

【著作の紹介】
『私の実家が売れません!』
〜”実家じまい”のお悩みを全解決する、新感覚の人情派「実家じまい」エッセイ〜