・わずか3・3坪! 極セマ空間で出会い、触れ合い、集い、語らう・コロナ禍でも店を開き、明かりをともし続けた ビルの壁にへばりつくようにポツンと一軒、笑っちゃうほど小さな店が建っている。裸電球の明かりが夜の歩道にこぼれ、入り口には「Ribes」の横文字の暖簾。わずか3・3坪、カウンター7席のみ。それでも、本格的なフルコースも提供するれっきとしたイタリアンレストラン&バーである。 カウンターに座ると、いきなり店主の梅沢英和さん(63)の顔が目の前にある。奥行1・5㍍弱の極セマな店内。その中央を幅約35㎝のカウンターが貫き、このカウンターの幅が店主と客を仕切るソーシャル・ディスタンスとなる。「なぜこんな小さくて窮屈な店を開いたのかと聞かれますが、これが実は私の理想の店なんですよ」 店主はその理由を語る。「私の夢はね、見知らぬ人同士が集って、料理と酒を小道具にしてコミュニケーションの輪が広がるような“場”をつくること。そのためには、この小ささ、この狭さがピッタリなんです」 主役は客であり、料理や酒は客が語らうための小道具にすぎない。といっても、その小道具は絶妙で味わいゆたかと評判。 若いころの梅沢さんは、レストランのホール・マネジャーとして敏腕を発揮するかたわら、世界各地を旅して、自分の思い描く理想の店づくりを模索してきた。30歳の時、サッカーの中田英寿が活躍したことで知られるイタリアのペルージャの町に1カ月ほど滞在し、“バール”と呼ばれるイタリア式の大衆酒場に通いつめた。「小さくて猥雑な酒場なんですが、地元の人たちが夜ごと集い、見も知らずの日本人なのにあたたかく迎えてくれて、とても居心地が良かったんです。自分がつくるならこんな店にしようと、この時店舗イメージが出来上がりました」 それから18年後、満を持してオープン。当初は客に恵まれなかった。「こんな小さな店ですから、お客さんは敬遠しますよ。しかし、小さいからこそ目立つという逆説も成り立つんです。毎日1人がこの店の明かりを見つけてくれれば、10日で10人、1年で365人…」客として定着するのはその中のほんのわずかである。それでも、軌道に乗ってからは常時100人以上の常連さんでにぎわってきた。 こうして15年。店主の趣味であるギター弾き語りやダンスイベントなども開催するほどになり、店は着実に理想の“場”に近づいていった。ところが、降って湧いたようなコロナ騒動。狭い濃密空間は、まさに三密そのもの。「お客さんが来ないから休業するという発想は私にはありません。店を開いて明かりをともしていることが大切。明かりが消えていたら誰にもここに店があることがわからない」 客が来る来ないではなく、行き交う人の心に「灯をともしておく」ことで、この騒動が落ち着いたら暖簾をくぐってみたいという人もいるはずだ。「一期一会という言葉があります。休業すると、このスーパー・ワンチャンスをみすみす失うことにもなります」 客層は20~40代が中心。この狭い店のカウンターに座ったのが縁で、これまで多くのカップルが誕生し、その中の数組は結婚にこぎつけたという。 http://www1.cts.ne.jp/~ribes2025/index.htm
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