長岡駅の喫茶店でTOEFL, TOEIC,教えます。独自教材も差し上げます。家庭教師、塾もあり。（投稿ID : 1km54a）

英語文法とは何か——「規則」ではなく「意味の体系」として あなたが「文法は抽象的でつかみづらい」と感じるのは、とても自然なことです。 多くの学習者がそう感じるのは、文法を「正しいか間違っているかを判定するルール集」として理解しようとするからです。 しかし、言語学の立場から見れば、英語文法とは単なる規則ではなく、「言語が意味を生み出すための体系的な仕組み（a structured system for meaning-making）」なのです。 たとえば、構文論（syntax）は、語順や文構造がどのように意味を形成するかを研究しますし、形態論（morphology）は、語の内部構造が文法的機能をどのように担っているかを明らかにします。 つまり文法とは、「形（form）」と「意味（meaning）」を結びつける橋のような存在だと考えることができます。 文法は「選択のネットワーク」である 英国の言語学者マイケル・ハリデイ（Michael A. K. Halliday）は『An Introduction to Functional Grammar』（1985）で、文法を「ネットワーク状の選択体系（a network of choices）」と定義しました。 彼によれば、話し手や書き手は言葉を使うたびに、無意識のうちに文法的な選択を行っています。 たとえば、 「She loves him」と「He loves her」は語順によって人間関係の方向を変え、 「She goes」と「She went」は時制によって時間的視点を変え、 「a」や「the」といった冠詞は、名詞の確定性や一般性を繊細に表します。 これらはすべて、話者がどのような世界を、どのような立場から語るかという「意味の選択」です。 つまり、文法とは「表現の自由を生み出すための制約」であり、思考と表現を結ぶ知的な地図なのです。 文法を学ぶことは、思考の構造を学ぶこと ですから、文法の学習とは単に「正しい英文を書く技術」ではなく、英語という言語が持つ思考の構造を理解することにほかなりません。 文法を通して私たちは、 世界をどのように分類するか（名詞体系）、 出来事をどのように配置するか（時制・相体系）、 他者との関係をどのように位置づけるか（モダリティ体系） といった、言語が反映する文化的・論理的な世界観に触れるのです。 アメリカの言語学者ノーム・チョムスキー（Noam Chomsky）は『Syntactic Structures』（1957）において、文法を人間の「生成的能力（generative capacity）」の表れと述べました。 つまり、文法とは、限られた語彙と規則から無限の文を作り出す創造のメカニズムです。 文法を学ぶとは、言語を通して思考を創り出す力を鍛えることでもあるのです。 文法の「美しさ」を見つける こうして文法を「規則」ではなく「意味の選択体系」として捉え直すとき、文法の抽象性はむしろその美しさに変わります。 文法とは、世界をどう見るか、他者とどう関わるかを形づくる「思考の地図」であり、そこには英語という文化の知性と感性が凝縮されています。 ですから、文法に向き合うときは、「正しいか間違っているか」ではなく、 「この文法構造は、どんな関係や感情、どんな世界観を表しているのか」 と問いかけてみてください。 その瞬間、英語文法は抽象的な暗号ではなく、「人間の心が世界を語るための構造」として見えてくるはずです。 参考文献 Halliday, M.A.K. An Introduction to Functional Grammar. London: Edward Arnold, 1985. Chomsky, Noam. Syntactic Structures. The Hague: Mouton, 1957. Lyons, John. Introduction to Theoretical Linguistics. Cambridge University Press, 1968. Lakoff, George. Women, Fire, and Dangerous Things. University of Chicago Press, 1987. 「英文法」という言葉はとても広く、抽象的に感じられるのも無理はありません。 実際、文法とは単なる「正しい文を作るためのルール集」ではなく、英語という言語がどのように意味を作り、世界を表現しているかを理解するための「思考の構造」でもあります。 たとえば、時制（tense）や語順（syntax）、冠詞（articles）といった一見細かな部分も、実は「英語で世界をどう捉えるか」という文化的・論理的な視点と深くつながっています。 そのため、学習を進める際は、「ルールを覚える」よりも、文法を意味や思考を形にするための仕組みとして一緒に探っていくことが大切です。 もしよろしければ、最初の数回は「文法とは何か」「日本語との根本的な違い」など、少し哲学的・体系的なところから入ってみましょう。 そこから徐々に、ご関心の方向（会話・読解・作文・資格試験など）に合わせて具体的なテーマを組み立てていく形が理想的です。 どうぞご自身のペースで、気になることを遠慮なくお知らせください。 文法の奥深さを「知的な楽しみ」として共有できればと思っております。